創造的思考をめぐる映画セレクション: 一緒につくる
ひとりでは思いつけない着想と、課題のもとにチームが組み上がっていく過程について。
創造的思考をめぐる映画セレクション: 一緒につくる
全7回の第6回です。ひとりでは思いつけない着想と、課題のもとにチームが組み上がっていく過程について。
セレクションでいちばん台詞の多い回です。ここではほとんどが対話と、他人の有能さを眺める楽しさで成り立っています。
Moneyball / 「マネーボール」 (2011)
貧しい野球チームのGMが、評判で選手を買うのをやめ、過小評価されたひとつの指標で買いはじめます。
テーマ: 予算を増やす代わりに指標を変えること、データとスカウトの経験の衝突、新しい手法に抵抗する業界、未検証の考えに賭ける代償。
余韻: 静かで賢く、控えめに勇気づけてくれます。期待されていた場所とは違うところで起きた勝利の手応えが残ります。
Spotlight / 「スポットライト 世紀のスクープ」 (2015)
大手新聞の調査報道班が、それまで個別の事件として見られていたものに規則性がないかを検証します。
テーマ: 手仕事としての取材手法、文書とリストを相手にする作業、全体像がそろうまで公表しない規律、組織の責任。
余韻: 真面目で抑制的、職業への敬意と制度への鈍い怒りを残します。派手な場面を意図的に排して撮られており、それが伝わります。
The Big Short / 「マネー・ショート 華麗なる大逆転」 (2015)
互いに無関係な数人が、他の全員が見ないことにしているものを金融システムのなかに見つけます。
テーマ: 格付けではなく一次データを確かめること、不人気な結論を抱えた人間の孤独、集団的な盲目、複雑なことを平易な言葉で説明すること。
余韻: 怒りとアイロニーがあり、勢いがあります。コメディのように観えて判決のように終わり、その取り合わせが記憶に残ります。
Seven Samurai / 「七人の侍」 (1954)
村が防衛のために武士を雇い、映画の半分はチーム編成と準備に費やされます。
テーマ: 役割による人選、訓練されていない者の訓練、工学的課題としての防衛計画、雇われた者と守られる者の関係。
余韻: 叙事的で悲しい。三時間半、登場人物とともにその時間を生きた感覚が残ります。
Ocean's Eleven / 「オーシャンズ11」 (2001)
ひとつの具体的な仕事のためにチームが組まれ、各人が計画の一工程を受け持ちます。
テーマ: 工程ごとの役割分担、他人の職人技を眺める楽しさ、構想の一部としてのスタイル、集団内の信頼。
余韻: 軽やかで洗練され、非の打ちどころなく愉快。このセレクションの重い作品のあいだに挟む休憩として最適です。
Steve Jobs / 「スティーブ・ジョブズ」 (2015)
三度の発表会、三度の舞台裏の衝突、要求することは得意で止まることが苦手な一人の男。
テーマ: 創作過程における発注者と編集者の役割、要求水準の高さと周囲が払う代償、他人の貢献を認めること、公的な像と私生活の対立。
余韻: 張りつめていて、賛否が割れます。台詞は早口で進み、主人公への評価は分かれ、観るより語り合うほうが面白い映画です。